東京の地下

こないだ、とある日本語ラップの曲が耳に入ってきて、しばらく耳を傾けていた。東京の日常風景の描写、電車や駅のSEなどが入り、普段着の東京暮らしが語られる。最後のセリフは、記憶が正しければ「僕は東京を愛している」。東京、愛してるのか。ちょっと複雑な気分になった。自分には口が裂けても言えないセリフだと思った。たとえラップでも、言えない。 海外暮らしをしていた時期、たまに一時帰国して訪れる東京は、楽しかった。自分の育った場所でありながら、離れて久しい日本の都会。半分は外国人旅行者のような目線で東京を眺めた。新宿のような人混みを歩いていても、自分はその一部ではなく、透明なカプセルに包まれながら歩いているように感じられて、ふわふわした非現実的な気分を楽しんだ。完全帰国して今年で5年。半外国人の透明なカプセルは、徐々に消えていった。今は東京から離れた土地で暮らしているけど、日本人モードに戻った自分の中に、現実の東京も戻ってきた。 普段は心の底に沈殿していて、あまり浮上してこないものがある。ふとしたきっかけで心に渦が巻き起こって、沈殿物が舞い上がり、目の前を灰色に染めてしまう。心の底の沈殿物なんてもう見たくないのに。今月初め、そんな気持ちでTFCライブのために上京していた。高速バスが遅れて、新宿までは走ったりトイレを我慢したり大慌てだったが、開演にギリギリ間に合う時間の電車に乗れた。新宿から内側の東京でひとり電車に揺られていると、楽しいライブ前なのにどんどん気分が沈んでいく。今日は、こんなところにほん…

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TFCニューシングル「Everything Is Falling Apart」公開

先日の来日公演で聴いたばかりの、レイモンドの新曲。あのとき「2週間前にレコーディングしたばかり」とノーマンが言っていたやつが、正式にスタジオバージョンで公開された。めでたい。ジェリーが抜けて、デイヴとエイロスが加わった5人のTFC、ファーストシングルはレイモンドの強力な曲。非常に熱い。 Teenage Fanclub - Everything Is Falling Apart (Official Video) スタジオバージョンを聴くと、ライブのときとはちょっと違った印象。あの演奏のようにギターがざくざく歪んだりしていなくて、近年のTFCらしい音。マイルドになった分、キーボードとコーラスが耳に届いてきて、カラフルになった。ライブレポートでは、激しい曲調、ラウドに歪みきったギターなんて書いたのだが、歪みきってるのはお前の耳なんじゃないか、と言われそうである。いや、本当にそうだったのだ。録音とかしたわけじゃなくて脳内記憶だけなので、ちょっと自信なくなってきたけど。イントロとアウトロのギターアンサンブルが印象的なのは、ライブでも同じだった。本当にいい曲だ。 曲全体でエイロスのキーボードがいい彩りになっている。映像ではデイヴとエイロスも大きくフィーチャーされていて、これからはこの5人で音楽を作っていくんだぜ、という勢いが強く印象づけられる。そしてこれはレイモンドの曲なのである。やはり、今後のTFCはレイモンドがノーマンと一緒にぐいぐい引っ張っていくんだ。今度はノーマンの新曲が出てくるだろ…

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時はいつの日にも親切な友達

過ぎていく昨日を物語に変える。これもまた、本当だなと思う。「物語」はちょっと綺麗すぎる気もするけど、時間は色々なことを解決してくれる。今まで生きてきて一番つらかった時期と二番目につらかった時期のことをときどき思い出すが、もう過去のことである。その時期のさなかには、いくらあがいても状況は良くならなかった。結局、ひたすら耐えて日々をやり過ごしただけ。良くない状況はあまり変えられないし、自分自身を変えることもほとんどできないと悟った。それでも、時間とともに、過ぎていく昨日は物語に変わっていくのである(荒井由実です、念のため)。 やりたくないことは、やらなくていいんだ。これは一番つらかった時期に知ったジョージの言葉で、今でも自分の指針として大事にしている。この言葉のおかげで、自分自身を守ることを覚えて、楽になった気がする。やりたくないことはやらなくていい、なんて当たり前のことみたいだが当時の自分は知らなかったし、誰もそんなことを言ってはくれなかった。ジョージがはじめて教えてくれた。高校生の頃に買った「With The Beatles」のレコードに付いてきた、ビートルズのディスコグラフィとかが載ってる小冊子の片隅に書いてあった発言だと記憶している。どんな状況での発言か、知っていた気もするがはっきり覚えてない。多分、ジョージも一番つらかったビートルズ末期、レット・イット・ビーの頃だと思う。 やりたくないことを無理にやって心を壊されるぐらいなら、やらなくていい。針のむしろのような状況は時が解決してく…

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