Under Pressure(この世は金さ)

日々の作業は基本的にひとりでやっている。頼まれたものを期日までに独力で仕上げる。よっぽどのことがない限り仕事を他人に投げたり手伝ってもらったりできないし、そんなことをたびたびやっていたら信用を失って仕事は来なくなるだろう。自分は共同作業より単独作業のほうがずっと得意なので、これはこれでいい。 最近、あまりやれる人がいない種類の作業を任されるようになった。やりがいはあるし、十把一絡げから抜け出すことは今後の生き残りに絶対必要なことだ。依頼してくれる側からの期待も感じる。それだけに、ひしひしとプレッシャーもかかる。ひとりでやっているので、このプレッシャーを分かち合える人が誰もいない。最近ちょっと平穏さを欠いてしまい、あまりよく眠れない。それでも、自分で選んだ道だし、ここで愚痴をたらたら垂れ流すつもりはない。 ただ、苦労した分の報酬はきっちりもらわないといけない。金もうけのために生まれたんじゃないぜ、とはいえ、この世は金さ。お金は要らないから仕事させてくださいなんて本末転倒もいいところ。ところが、手間もプレッシャーもかかるしんどい作業をしているのに、ずっと楽な通常作業より稼ぎが少ない状況になってしまっていた。こんなときは我慢せずに声を上げないといけない。黙って我慢していても潰されるだけである。今朝、ちょっと声を上げた。状況を切々と訴えたところ、報酬面でわずかに改善された。アンダー・プレッシャーな状況は変わらないが、お金は少しだけ多くもらえるようになった。心の平穏を金で少しだけ取り戻した。 …

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インド日記2008年7月:ムンバイで電気製品が壊れたら誰に直してもらうか

ムンバイはモンスーン(雨期)真っ最中。最初の一週間は毎日朝から晩まで雨降りという憂鬱な気候でほとほと落ち込んでしまったが、その後はむしろ空モンスーンとなり、湿度は高いが涼しい日々で、夏よりはずいぶん過ごしやすくなった。 涼しくなっても、天井に付いている扇風機(パンカー)は必需品。このパンカーがある日突然壊れた。急に回転が遅くなったと思ったら、「ぷしゅー」という音をたててパンカーは停止し、モーターの部分から潤滑油らしい液体が噴き出してきた。きつい臭いのするオイルが床にまき散らされた。これは一大事。 当時暮らしていた部屋にあったパンカー すぐさま近所の電気屋にバイクを飛ばして修理を頼んだ。翌日の朝10時に来てくれることになったが、当然のごとく約束の日時には来ない。何度か頼みなおした挙げ句、2、3日してやっと電気工のカムレーシュ氏がやって来た。我が家には4つのパンカーがあるがそのうち3つが問題を抱えており、来てもらったついでに全部見てもらう。カムレーシュ氏はパンカーを一つ一つ見ては、これはワイヤーが駄目、これはキャパシター、と次々に診断を下していく。壊れたパンカーを持ち帰り、夕方の4時にまた来る、と言って去っていった。果たして約束の4時を5分ほど回った頃にカムレーシュ氏は再び現れた。インドでこの種の約束が守られるのはめったにない出来事で、大いに驚き感心する。オイルをまき散らしていたパンカーはきっちり修理され、台所のゆっくりしか回らなかったパンカーも、飛び立ってしまいそうなほど高速回…

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訳詞:Simon & Garfunkel「A Most Peculiar Man」

近ごろ、近所で電車が長時間にわたって停車することが相次いでいる。人々がぞろぞろ出てきて、パトカーや救急車もやってきて、何が起こったのかは把握できる。自分は「事故」の見物になど行かない。かといって、踏切にいたという知らない誰かに思いを致すことも、無関係の単なる近隣住民のひとりでしかない自分にはできない。なるべく視界に入れないようにして、日常生活を続けるしかない。それ以外にできることが何もない。 「とても変わった人」は、それほど変わっていない人たちには想像もできないようなことを深く気に病んでいたり、苦痛に感じていたりして、日々傷つきながらも、その状況を誰にも説明できず、理解もしてもらえなかったのかもしれない。この曲が終始穏やかなアルペジオに乗って最後までのんびり進んでいくのは、彼をやんわりと遠ざけて平穏に暮らしている世間の立場から歌われているから。自分もその世間のひとり。 生きていて、孤独でいたいと思うことならしょっちゅうあるが、疎外されたいと思ったことは一度もない。孤独感と疎外感は全然違う。自分は疎外されるのは絶対に嫌だ。むしろ疎外されるのが嫌だから孤独を求めるところすらある。 「あの人はとても変わった人だったのよ」 リオダン夫人はそう言っていた 彼女もそれぐらいは知っていた 彼の上の階に住んでいたのだから とても変わった人だった、と彼女は言った 彼はとても変わった人だった 家の中でひとりぼっちで暮らしていた 部屋に閉じこもり、自分に閉じこもり とても変わった人…

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