He Ain't Heavy, He's My Brother

朝はめっきり冷え込むようになって、起きるのがつらくなってきた。今朝はその上、目覚めた途端に脳内でホリーズの「He Ain't Heavy, He's My Brother(兄弟の誓い)」のイントロが流れ出した。映像喚起力のものすごく強いイントロで、ばーんと大きな夕日をバックに弟を背負って歩く兄のシルエット、という場面が哀愁のハーモニカとともに脳内いっぱいに展開する。朝っぱらからこんな黄昏れた世界が広がってしまっては、起きようにも起きられないではないか。寒いし。



ホリーズで一番ヒットした曲のひとつだが、自分が一番好きな曲とはいえない。初期のビートナンバーのほうが圧倒的に好きである。でも朝からずっとぐるぐる回っているこの曲を頭から振り払いたいので、ここで記事にして成仏させるつもりである。「その道は長く、曲がりくねっている」という出だしの歌詞に、大掛かりなオーケストラと女声コーラスのアレンジ。完全にビートルズの「The Long And Winding Road」の世界で、常にビートルズと近い位置にいたホリーズはこの曲を下敷きにしたのかな、と憶測しそうになるのだが、ホリーズがこの「兄弟の誓い」を出したのは、ビートルズより前の1969年9月だった。そして、この曲はホリーズのオリジナルではなく他人のカバー。どうもビートルズとは関係なさそう。60年代の終わり、70年代を目前にしたロック勢は、こういう壮大なバラードを出したい気分でシンクロしていたように見える。



Kelly Gordonという歌手/プロデューサーが発表したオリジナルバージョン、いま初めて聞いたが、ホリーズよりもっとどっしりしたテンポでソウルフルに歌っていて、格好いいと思う。

ホリーズというと高校時代の西新宿を思い出す。ビートルズやストーンズを話題にするクラスメイトは何人かいたが、自分とはそりの合わない連中に限ってロック話で盛り上がったりしていて、自分は誰とも交わらずにずっとひとりで好きな音楽を掘っていた。ましてやホリーズで話の合う人間が周囲にいることなど、最初からまったく期待していなかった。よく西新宿のマニアックな(怪しげな)輸入レコード屋が並ぶ一帯にひとりで通ってはCDを物色していた。グラハム・ナッシュ在籍時代の初期ホリーズがとにかく大好きだったが、平成になったばかりの日本で普通に手に入るホリーズのCDは「兄弟の誓い」や「バス・ストップ」など代表曲が入ったベスト盤しかなかった。もっとたくさん聴きたくて、BGOというレーベルから再発されつつあったオリジナルアルバムや、アルバムにも入ってない曲を集めた編集盤を見つけては購入していた。当時のクリスマスの思い出といえば、西新宿でクリスマスセールの輸入盤をあさっていたことしか浮かんでこない。時代はバブルまっしぐら、東京の中でもオシャレの象徴みたいな街の名前を冠した高校に通っていたが、自分は自分、まったく何の影響も受けなかった。そんなものだ。かつて生きていた時期に後からどんな名前が付けられようが、そのときの自分がいるだけで、その自分は今も昔も大して変わっていない。


「兄弟の誓い」のB面曲、こっちのほうがずっとホリーズらしくて自分は大好き