「Chains」のジョージは声がかすれている

毎日の作業が夜遅くに終わってから布団に入るまでの時間、パソコンの電源を切って部屋の明かりも落とし、レコードを聴くのが最近の習慣。かつてはそんな時間にチューハイをがぶ飲みしていたが、毎晩常習的にアルコールを摂取するのをやめた代わりに、集中して音楽を聴くことが増えた。先日はビートルズの「Please Please Me」をかけた。これこそ何千万回聴いたかというものだが(言い過ぎである)、その晩に聴いたときは「Chains」を歌うジョージの声が少しかすれているのが耳に引っかかった。ジョージのガラガラ声といえば1974年の「Dark Horse」で、多忙なスケジュールと私生活トラブルの中で制作されたために荒れた声で歌わざるを得なかったのだが、「Chains」を歌うジョージもわりとハスキーな声なのだ。



このアルバムでジョージがリードヴォーカルを取るもうひとつの曲、「Do You Want To Know A Secret」では澄んだ声で歌っている。アルバムに収録されている14曲のうち10曲が1963年2月11日、たった1日のセッションで録音されたことは周知のとおり。アルバムのB面ラストを飾る「Twist And Shout」は録音順も最後で、ジョンが喉を潰しながら渾身のシャウトを決めた。ジョージの喉に疲れがうかがえる「Chains」も最後のほうに録音されたのかな、とおなじみのバイブル「The Complete Beatles Recording Sessions」をめくってみた。この本もあまり全面的に鵜呑みにしてはいけないことが段々わかってきたが、このセッションに関しては当日のレコーディングシートの写真も載っているので間違いなさそう。録音順は以下のとおり。

午前10時~午後1時「There's A Place」「I Saw Her Standing There」
午後2時半~午後6時「A Taste Of Honey」「Do You Want To Know A Secret」「Misery」
午後7時半~午後10時45分「Hold Me Tight(未発表)」「Anna (Go to Him)」「Boys」「Chains」「Baby It's You」「Twist And Shout」

やはり「Chains」の録音は最後のほうだった。朝10時から演奏し続け、2回の休憩を挟み夜7時半から行われた3時間15分のセッションで、未発表含めて6曲も録音した中の4番目。リードヴォーカルのほかコーラスでも重要な役割を果たすジョージ、朝から夜遅くまで続いたセッションも終盤となれば声がかれても無理はない。かすれた声とはいっても、もちろん最近はじめて気になったぐらいで「Dark Horse」ほどあからさまではない。立派にヴォーカルの役目を果たしている。ジョージのお誕生日は1943年2月25日、レコーディングが行われた63年2月11日は20歳になる2週間前。ビートルズの末っ子ジョージはまだぎりぎりティーンエイジャーだったのだ。ビートルズのデビューアルバムA面4曲目、「Chains」はリードヴォーカルとして19歳のジョージの(かすれ)声がイギリス全国にはじめて響いた記念すべき曲。

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「Chains」の記録が残っている手書きレコーディングシート、よく見ると「Anna」が「Hannah」と誤記されている。スタジオのスタッフが聞き間違えたのだろうけど、アンナとハンナでは何だかえらく印象が違う。