訳詞:Crowded House「Don't Dream It's Over」

今でもどこかで必ず流れていそうなありふれた80年代ヒット曲だけど、聞こえてくればつい耳を傾けさせられる力を持った曲。「Don't dream it's over」という歌詞、うっかり文字どおり読むと「夢なんか見てるな、もう終わったんだ」という絶望的な意味に取ってしまいそうになる。ところが歌詞をよく読めば本当は逆の意味、「もう終わりだなんて夢想するのはやめろ」という希望の歌だとわかる。歌詞にある戦争も環境問題もどんどん悪化するばかりだし、この歌が出た頃にはまだ存在したベルリンの壁が崩壊して、ネットの時代になっても、人々を隔てる壁はむしろ高くなるばかり。異常気象に大災害にテロの頻発、もう世界の終わりは近いのかも、と絶望的な気分についとらわれてしまう昨今だけど、もしかすると、大昔から世界はいつも破滅前夜で、もうおしまいだ、と絶望に落ちそうになるたびに「おい、しっかりしろよ!」と希望を奮い立たせて、一日一日、持ちこたえてきたのかもしれない。そう信じたい。過去から学べるところは学び、悲惨な体験を忘れ去ることなく語り継ぎ、教訓をがっしりと積み重ねていければ、進歩できるはず。一日一日、前を向いて生きのびる。 クラウデッド・ハウス、86年にヒットしたこの曲しか知らなかったけど、Spotifyで見てみたら一発屋どころか90年代から21世紀に入っても新作を出し続けていて、後年の作品もパワーポップとして楽しく聴けた。「Don't Dream It's Over」が突出した名曲であることは間違いないけど。Sixpe…

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「Help!」の当初のタイトルは「Eight Arms To Hold You」、ではなかった

ビートルズ2作目の映画「Help!」(4人はアイドル)の仮題が「Eight Arms To Hold You」だったのは有名な話。ビートルズ4人で8本の腕があなたを抱きしめる。このあまりスマートとはいえないタイトル、映画の制作側が考えたものだとずっと思っていたけど、自分が持っている2007年発売のリマスターDVDの解説をこないだよく読んだら、これまで自分が何となく認識していたことと違う事実が書かれていた。解説の冒頭に載っている、リチャード・レスター監督の文章によると、「Eight Arms To Hold You」は「A Hard Day's Night」と同様にリンゴのアイディアで、「8本の腕」とは映画に出てくるカイリ教の神像の腕がたくさんあることにちなんでいたという。ビートルズ4人の腕が神様像みたく重なっているイメージかな。 解説に載ってるスチール写真より。実際には10本あるようだが。 さらに「Eight Arms To Hold You」は「Help!」の当初のタイトルですらなく、仮に「Beatles Two」として原案を考えていた段階から、「Help」というタイトルにするつもりだったらしい。ただし、この「Help」にはビックリマークが付いていない。著作権上、同じ題名がすでに登録されていたために映画のタイトルに使えないことがわかり、「Help」は一旦あきらめて別のタイトルを検討することに。その過程で「Eight Arms To Hold You」が浮上したようだ。その仮タイト…

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グランダディの新曲「R.I.P. Coyote Condo #5」がとても良い

グランダディは2000年の「Sophtware Slump」が出た頃に知って、とても好きだったバンド。例によって最新音楽情報には疎いので、去年の暮れに新曲を出していたことは知らなかった。昨晩はじめてSpotifyで見つけて、聴いてみたらとても良かった。コヨーテの死について歌った、8分弱にわたるゆったりとした美しい大曲。うっとりと音楽の世界に引き込まれ、終盤に繰り返し出てくるピアノフレーズはクイーンのあの曲に似ているなあ、と耳で追っているうちに、8分などあっという間に過ぎてしまった。 RIP Coyote Condo #5 歌のテーマは、アパートの向かいの駐車場に現れて警備員に射殺されてしまったコヨーテについて。アメリカではありふれた動物なのだろう。何かコヨーテの死の物語に込められた「意味」はあるんだろうか、と検索してみたりしたけど、作曲者のジェイソン・ライトル本人は「一大叙事詩みたいなもの」と言葉少なに語っているだけ。きっと、歌詞に書かれている以上でも以下でもないのだろう。その夜、運の悪いコヨーテは無慈悲に殺され、アパートの住人達は、ざまあみろ、ついに仕留めてやった、「駆除」してやったぞ、と乾杯して一晩中大いに盛り上がる。ジェイソンはそっとコヨーテの側に立ち、美しく悲しい一大叙事詩を捧げる。これは夢ではない、目の前で起きたことそのままなのだ、と嘆きの言葉を繰り返す。だから自分はグランダディがとても好きなのだ。 2000年当時、自分がやられてしまったのは「The Crystal L…

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