インド日記2007年12月:タブラ試験

インド在住当時は音楽学校に通ってインド古典音楽の打楽器タブラを習っていた。タブラはインド古典以外でもビートルズの「Within You, Without You」をはじめ色々な音楽に使われているし、最近は日本でもわりと知られるようになってきたようだ。学校に通っていた頃、年末は進級試験のシーズンで練習や暗記に忙しかった。とはいえ、自分が学んだのは基本知識程度で、ちゃんとした演奏や伴奏ができるようなレベルには到底及ばないまま半端に終わってしまった。本来なら、師匠について真剣な修練を積んだ者だけがやっと入口に立てるインド古典音楽の世界。自分は外から見学した程度だったけど、その道の名人たちの演奏を目の前で見たり、教わったり、かけがえのない体験をたくさんさせてもらった。できることなら、いつかまた続きができればと思っている。 音楽学校でインド古典音楽に使う太鼓「タブラ」の勉強をしている。今年はついに、タブラの進級試験を受けることになった。どんなことをやるのかというと、とにかくカイダというのを暗記しなければならない。カイダとはあらかじめ決まったタブラ独奏曲で、それぞれのテーマに沿って徐々に変奏しながら8~10とおりぐらいのパターンを次々に演奏していく。この一年ちょっと、タブラの授業では先生からひたすらこのカイダを教わって、ノートに取って練習していた。例えばカイダのテーマはこんな感じ。 ダティタダティタダダティタダゲティナキナ タティタタティタタタティタダゲディナギナ 何かの呪文みたいだが、この「ダ」…

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インド日記2006年11月:日本、それほど有名ではなかった

この日記によれば、2006年当時ムンバイで暮らす日本人はたったの200人台だった。現在は1000人以上に増えているようだが、ムンバイ都市圏全体で人口2000万人超。いずれにしても日本人は何万人に1人というかなりレアな人種であることは間違いない。だがそこは多様性のありすぎるインド、自分は異国から来たエイリアン扱いされることはなく、インド人の一種として当たり前にヒンディー語で話しかけられた。 異国にいると自分が日本人であることを否が応でも意識させられる。和食や日本の風土が懐かしくて仕方ない。日本にいるときは世間と自分の食い違いにばかり目が行き、この国には合わない人間なんだ、と思い込んでいたが、外に出てみればどっこい、行動パターンなど諸々がどうしようもなく日本人である自分に気付かされる。何だかんだ言っても自分が生まれ育った土地が結局好きなんだ、ということもよく分かった。こういう気持ちを国家への忠誠に置き換えようとする「愛国心教育」にはまったく賛成できないが。 ムンバイにいて気が付いたことは、思っていたほどここでは日本が有名ではないことだ。どこの国から来たか聞かれることも多いが、当てさせてみると、中国、韓国、ネパール……ときて日本が出てこないこともしばしば。「サヨナラ」という日本語を知っている人は多いが、これはもう40年も前の東京オリンピックの時代に日本ロケで撮られたインドでは有名な映画、「Love in Tokyo」の挿入歌に「サヨナラ」という曲があってヒットしたから(この曲もどちらかという…

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「ガリーボーイ」を観に行かない理由などない

自分が暮らしていたムンバイで制作されているヒンディー語のボリウッド映画をはじめ、インド全国さまざまな言語で盛んに作られているインド映画。かつてに比べれば日本にもやや浸透してきたかもしれないが、大都市を離れれば映画館でインド映画が上映されることはあまりないし、こちらの近場の映画館に来ることなどめったにない。先日、車で3時間以上かかる土地にある映画館で、ムンバイを舞台にしたインド映画「ガリーボーイ」が上映されるということで、当地にホテルを予約して出かけた。一本の映画を観に行くために一泊旅行である。もちろん東京にも3時間かければ行けるのだが、映画だけのためにストレスフルな東京に出て一泊なんてまっぴら御免である。映画ついでに知らない街を歩いてみることもできるのが良い。 知らない海を眺めた 「ガリーボーイ」はすばらしい作品だった。自分はヒップホップのファンでは特にないが、この映画のために作られた楽曲群はどれもシンプルで力強く、耳にしっかり残る。実際にモデルになったインドのラッパー達の全面協力を得て制作された音楽で、ボリウッド的な装飾は排されている。かといって、アメリカのヒップホップを表面的にまねたものでもなく、英語もほとんど入れずにガツンとヒンディー語でラップしている。ムンバイのスラムに生まれて、貧困と身分格差のくびきから抜け出せずに絶望を強いられている主人公は、それでも夢を持ちたい、自分の言葉でどうしても吐き出したいことがあるから詞を書き、ラップをやっている。ふだん話さない英語の入る余地な…

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